#1-4 夫が専業主夫に!育Workに「正解」ナシ?

育Workerインタビュー#1 小川明子さん 第4話
子供たちが小中学生というときに46歳の夫から「会社を辞めるから」と言われた小川さん。3人の子供を育てながら仕事を続けてきた小川明子さんへのインタビュー第4話(最終話)では、当時のエピソードを話していただくとともに、育Workerへの応援アドバイスをいただきました。
第1話「こんなハズじゃ…」想定外だらけの育Workを救った一言
第2話 実家の支援、給料、夫……隣の芝生と比べてもしょうがない
第3話 ワンオペ3人育児で諦めたこと、大事にしたこと
聞き手・構成:本サイト運営人 小林麻理

小川明子さん
(リクルートマネジメントソリューションズに勤務)

子供3人、これからお金がかかるのに

―お子さんたちが小中学生というタイミングで、夫から「会社を辞めるから」と告げられる。しかもまだ46歳。びっくりしますね。

驚きましたね。子供3人、これからお金かかるのにどうしよう!とは思いましたよ。夫は、会社を辞めて自分個人で何かをやっていきたいということでした。
結局夫は、2年後に人材コンサルタントとしての仕事を個人で始めることになりますが、辞めた当時は、まだ何をするかもはっきり決めていないような状態です。そのため、しばらくは専業主夫をすることになりました。

―専業主夫というと今でも新しいと捉えられそうですよね。小川さんご自身が働いている状態だったとはいえ、よく受け容れることができましたね。

当時も、「新しいね」と周囲の人から言われました(笑)。でも、私には「夫は人間的に自律した人だ」という信頼感がベースにあったので、受け容れられたのかもしれません。
それに、夫が家にいたら自分が思い切り働けて嬉しいという思いもありました。実際、私はこれをきっかけに、13年間の時短勤務からフルタイムの働き方へ切り替えることになります。

そして退職とともに単身赴任を終えて家に戻ってきた夫は、掃除・洗濯・料理などの家事全般はもちろん、保護者会や地域の当番も引き受けてくれました。周りは母親ばかリなのに……みたいなことを気にする様子もなかったですね。

変化した夫婦の分担、子供たちの意外な反応

―お母さんがフルタイムで働き、お父さんが家にいる。お子さんに戸惑いはありませんでしたか。
特になかったです。子供たちは、家にお父さんがいてくれるということを、喜んでいました。それに、家事に関しては私より夫がマメで、掃除も料理もきっちりやるんです。そういった面も子供にとっては「すごいな」と映るんでしょう。
それに比べて私は家が散らかっていても平気にしている「ダメなお母さん」。だから子供は「お父さんはなんでお母さんと結婚したの?」なんて聞いたりするんですよ(笑)。反論したいことはたくさんありますが、本当に、私にはもったいない夫だと思っています。

育Work中でもできた新たなチャレンジ

―でも旦那様のほうが単身赴任で平日不在という時代が6年もあったんですよね。育Workしていくうえで、夫婦の役割分担が変化してもいいし、正解はないのだなと考えさせられます。働き方もずいぶん、変化しましたね。
はい、そしてこの間、会社が育児をしながら働く自分を受け容れてくれたことに感謝しています。
3度目の復職の頃には、時短勤務でも時間給ではない職種(専能S職)を新設するといった配慮もしてもらいました。それまでは時短=時間給でしたが、当時の上司が、「働き方が時短だったとしても、成果が重要で時間ではかる性質ではない仕事もある」と人事部にかけあってくれたのです。

そして「時短勤務のワーキングマザーだったら、これくらいしかできないだろう」という目で見ずに、いろいろと新しいチャレンジをさせてもらえたから、私が前向きに仕事を続けてこられたという面も大きいと思います。

―そしてその後、2010年にシニアスタッフ(管理職相当のプロフェッショナル職)になり、2015年からは広報を担当されて今に至るわけですね。現在、お子さんたちはどうされているのですか?

長男は大学院生、次男は今年社会人、下の娘は大学生で、みんな家を出ました。なので、今は夫婦二人暮らしです。それぞれ自分の人生を歩もうとしてくれているようで、親として嬉しく思っています。
こうしてみんな育ってくれたけれども、長男や次男からは帰宅時に私が家にいなくて寂しいと思うときがあったとか、下の娘からは小学校で仲間はずれにされていたときがあったと、あとになって聞きました。そのときに気づいてあげられず、申し訳ないという気持ちと、よくぞ自分自身でそれを乗り越えてくれたという感謝の気持ちの両方があります。

2018年末、家族旅行にて

比較しない、感謝する、自分を褒める

―様々なことを乗り越えて育Workを続けられてきた小川さんに、育Workerの皆さんに向けて、幸せな育Workをするための応援アドバイスをいただけますでしょうか。

いまは、働き方の選択肢が増えたように見えて、育Workをするための制度は十分とは言えないし、保育園は以前よりむしろ入りづらくなっているなど、私の時代以上に大変なこともあると思います。
そのうえ、ネットをはじめ、育児に関して様々な情報がいまはあふれています。色々な人が色々な説を言う。そうするとそうした情報に振り回されてしまい「どれがいい子に育つための『正解』なの?」と正解探しにやっきになってしまうかもしれません。

でも結局、子育てに「正解」はないというのが三者三様の育児に直面した私の実感です。だからこそ、正解探しよりも、自分が納得できる自分なりの「軸」にこだわることをおすすめします。
「誰に言われてもここはこだわろう」みたいなものを1つ自分の中に置いてみることから始めてみるとよいかもしれません。それも、ぶれないモノを絶対決めなくてはいけないということではなくて、これじゃダメだと思ったら、また変えてもいいんです。

そして、比較しない、周囲や自分が恵まれているところに感謝することはお話したとおりですが、加えて、自分が「できていること」を褒めるようにするのが大事だと思います。できていないことを見て、自分を責めるより、できていることを見て、自分を認めてあげる。そうすると、結果的にほかの人にも子供にも優しくなれるからです。そうしたことが、幸せな育Workにもつながるように思います。

―たしかに「比較しない、感謝する、自分を褒める」ということを少し意識するだけでも育Work生活がずいぶん変わりそうです。小川さんの実際の体験に基づいた、前向きに育Workするためのヒントが満載のお話に、育Work中の私自身、とても勇気づけられました。育Workerインタビューにご協力いただき改めてありがとうございました!

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ABOUTこの記事をかいた人

小林麻理

ビジネスコンテンツライター、社会保険労務士、本サイト運営人。企画・編集オフィスライト(https://officewrite.wordpress.com)、社労士事務所ワークスタイルマネジメント(https://workmanage.net)代表。1978年千葉県生まれ。2000年早稲田大学法学部卒業、NTTデータ入社。2003年に出版社(商業界)に転職、その後、翔泳社を経て、2013年3月に独立。現在、3歳の娘の育児中。