【第1話「こんなハズじゃ…」想定外だらけの育Workを救った一言 】
【第2話 実家の支援、給料、夫…隣の芝生と比べてもしょうがない】
聞き手・構成:本サイト運営人 小林麻理

小川明子さん
(リクルートマネジメントソリューションズに勤務)
夫が単身赴任、ワンオペ生活のはじまり
―第三子のご出産から1年で旦那様が九州へ単身赴任。ご実家も遠いですし、いまでいうワンオペ育児状態になりますね。一緒についていくかで迷われませんでしたか。
夫は九州出身だったので、九州支社の立ち上げで呼ばれたのは仕方がないかなと思いました。このとき、長男はもう小学校に通っていましたし、支社の規模からいっても一緒に行くというイメージもありませんでした。そのため、単身赴任という結論を出すのにそれほど迷いはなかったです。
じつは以前から、夫が平日帰ってくるのは子供を寝かしつけたあとの22時すぎ。つまりもともとワンオペ状態だったので、大丈夫だとも思ったのです。週明けに本社定例会議があるため、週末には戻ってくるということも安心材料でした。
―実際、始まってみていかがでしたか。
当時、子供は小さいですし、やはり大変で必死だったんでしょうね。食事中の会話で私が大声で笑ったとき、小学生だった長男から「お母さん、久しぶりに笑ったね」と言われて「私、そんなに笑ってなかったのか」とショックを受けたのをよく覚えています。
家事の中で、一番大変だったのは、掃除と洗濯です。子供3人分、大量の洗濯物がいつもあって、ずっと洗濯しているような感覚です。そのうち、たたむのは諦めました(笑)。家は、急に人がきてもあげられないような状態です。
今振り返れば、子供たちを手伝わせながら、家事ができるように育てるのが理想的だったと思いますが、そんな体力や忍耐力はなかったですね。家に帰ってきたそばから兄弟げんかがはじまって、「やめなさーーい!!」と怒るというような、毎日でしたから。
お好み焼きとオリジン弁当が我が家の定番に
そうした毎日のなかで、近隣に住む方々にはずいぶん助けてもらいました。たとえば、同じ保育園に子供を預けていたお母さんは、私より先に保育園に着いたら、自分の子供と一緒にうちの子供も連れて帰ってくれたりしました。食事に関しても、保育園の先生や近所に住む専業主婦のいわゆるママ友が、料理を多めに作って分けてくれるなど、本当にありがたかったですね。
もちろん、それも毎日というわけにはいきません。結果、時間がかからないホットプレートで一気につくれるお好み焼きやもんじゃなどが我が家の定番メニューです。その時間すらないときは、オリジン弁当など即席弁当屋さんの出来合いのものを買ってくるという日々です。
ただ、料理には時間がかけられなくても、子供たちと一緒に夕食をとることにはこだわっていました。そして、「今日はどんないいことがあった?」と3人の子供たちにそれぞれ聞くんです。子供と一緒に夕食をとるというこだわりは、当時の働き方の選択にも影響したことです。

夫の単身赴任時代、幼稚園のイベントにて
お友達トラブル、「母親が働いているから…」と言われて
―育Work中、家事を完璧にこなすのは難しいと思います。小川さんはそうしたなかでも、お子さんと過ごす夕食の時間を大事にされたのですね。そのころ、家事以外で大変だったことはありますか。
はい、次男が小学校の高学年にあがると、学校からの電話が増えました。乱暴な言葉遣いで、お友達を傷つけたということが多かったです。ときには手がでたということもありました。次男は3人兄弟の真ん中で、いちばん活発です。家では、激しい兄弟げんかもしょっちゅうでしたが、それが外で友達相手となると問題になってしまいます。
息子には、なぜ、そんなことをお友達に言ったのか、理由を聞きます。そうすると、相手が先にひどいことを言った、みたいな言葉が返ってきます。それに対し「どういう理由にしろ、相手を傷つけたのは事実だよ」と伝えるのですが、でもあいつが悪い…の繰り返しです。本当に子供同士のトラブルというのはままならないものです。
先生も次男のやんちゃぶりに手をやいていたのだと思います。そしてそのうち、保護者会などで「母親が働いているから、あの子はトラブルが多いんだ」と話すお母さんたちの声が、聞こえてきます。
働くのをやめれば、問題は解決するのか?
―ただでさえ、仕事と育児で大変なときに「働いているから子供が…」なんて言われたら、心折れて仕事をやめようか真剣に悩んでしまいそうです。
私だって心が折れそうになりましたよ、というか一時的に折れたかもしれません。それでも、辞めるということはしませんでした。出産後も仕事を続ける人が少数派だった当時、ここで私は辞められない、みたいな変なこだわりを持ってしまっていたのかもしれません。
なにより、私が働いていることと次男が活発すぎるということは、完全に無関係とは言えないだろうけども、100%そのせいかというと違うと思ったということもあります。つまり、働くのをやめれば解決する問題でもない。
むしろ、働くのをやめて息子の問題のことばかり家で考えていたら、自分がノイローゼになっていたんじゃないかと思います。保護者会ではいろいろと言われて針のムシロという気持ちでしたが、育児と一定の距離を置いて、別の成果をだせる仕事場という自分の居場所があるからやっていけたというところがあります。
―保護者会への足は遠のきませんでしたか。
保護者会にも、きちんと行くようにしました。行かなくなったら、「ほら保護者会にも出られなくて…」みたいなことをさらに言われるし、息子もしんどいだろうなと思ったのもあります。
そして、特に、息子が喧嘩をした相手のお母さんには、こちらから話しかけに行くようにしていました。「うちの息子がすみませんでした、お子さんの様子はどうですか?」といったかたちです。直接、話をしているうちにわだかまりや誤解がとけていくこともあるし、次男の活発さにも少しは寛容になっていただけた部分もあったと思います。次男が小学校を卒業する頃には、トラブルになったお友達のお母さんとも、なんでも話せる、とまではさすがにいきませんが、向こうからも笑顔で話しかけてくれるようになっていました。
#お友達のトラブルやその保護者たちとも向き合いながら仕事を続けてきた小川さん。長男が中学、長女が小学校に進学した2006年、今度は46歳の夫から「会社を辞めるから」と告げられます。【第4話(最終話)夫が専業主夫に!育Workに「正解」ナシ?】ではそこからお話を伺います。