「育休中=ブランク」を覆す、新・スキルの棚卸法

職場から離れたことに不安を感じる方へ

出産・育児に伴い仕事を休んだり、いったん辞めた方の中には、そのことで同僚に遅れをとってしまったのではないかと不安を感じたり、仕事を休んでいた期間が長くなったために復帰自体に踏み出すのがおっくうという方もいらっしゃるかもしれません。

そんな方にぜひ、お勧めしたいのが、職場以外で培った自身のスキルを棚卸しできる「家オペ力 マトリックス」です。これは、2018年の8月に主婦(主夫)向け人材サービス「しゅふJOB」(運営:ビースタイル)の調査機関、「しゅふJOB総研」が発表したリリースで紹介されたものです。本記事では、その内容をご紹介したいと思います。

ブランク(=空白)期間という呼び名への違和感

本リリースの最初のタイトルが「ブランク(空白)期間という呼び名への違和感」。内容を見ると次のような記述があります。ここでは、家事や子育てなどを「家仕事」という言葉で表し、その重要性を説明しています。

これまで専業主婦が行ってきた家事や子育て、近所づきあいなど家周りの仕事(家仕事)の必要性が減少している訳ではありません。家仕事は、社会生活を営む上で必要不可欠なものです。

そして、家仕事のオペレーションを「家オペ」と呼び、「家オペ期間は、職場とは異なる様々な経験を積むことができる期間」だとして、次のように「ブランク期間」という呼び名への違和感に触れています。

本当に家仕事はブランクなのでしょうか?家仕事のオペレーション(家オペ)を通じて成長したり、磨かれているスキルはないのでしょうか?そんなはずはありません。家オペ期間は、職場とは異なる様々な経験を積むことができる期間。それを空白期間と呼んでしまうことの方にこそ違和感があります。

「ブランク期間という呼び名に違和感」に共感
2017年、38歳で出産した筆者は、お恥ずかしながら、それまで育児で何が大変か、まったく理解していませんでした。そんな私ですが、産院から帰宅後、夜一睡もできずに過ごしたあの日から、育児の大変さを実感する日々です。
相手は、言葉が通じないことはもちろん、動き出した途端に危険なことでも平気でやろうとします。いつも気が抜けないのは当然のこと、その目まぐるしい変化や予測不能な行動に臨機応変に対応しなければなりません。
そして、思ったのは「育児ってすごいスキルが必要!!」ということ。そして、「育児で仕事を休んでいる期間=ブランク」という捉えられ方がされていることに、違和感を感じるようになりました。そうした筆者にとって、このリリース内容はとても心に刺さるものでした。

家オペ力を9つのシーンと9つのスキルで整理する

では、「ブランク(空白)ではない」ということを実感するにはどうしたらいいのでしょうか。本リリースでは、家オペ期間にどんなことに取り組み、何を学び、どう成長したのか。それらを洗い出し整理しておくことを勧めています。

そして、その際のツールとして提案されているのが冒頭に述べた「家オペ力 マトリックス」です。これは、職場以外における「家仕事」シーンとビジネス上で重要視されるスキルをかけあわせて家オペ力を整理する一覧表です。そして、以下のような9つのシーンと9つのスキルが提示されています。

  • 9つのシーン
    ご近所づきあい
    ママ友・パパ友との交流
    子どもの習い事
    PTA活動
    自治会またはマンション管理組合
    家計管理
    子育て
    家事
    ボランティアなど自主活動
  • 9つのスキル
    コミュニケーション力
    リーダーシップ
    マネジメント
    企画・提案力
    プレゼンテーション力
    交渉力
    コスト改善
    段取り力
    忍耐力

これらを掛け合わせると9×9=81パータンの家オペ力があるということです。本リリースサイトでは、マトリックスシートとそのサンプルがダウンロードできるようになっています。
サンプルでは81個の家オペ力の整理例がびっしりと書かれていますが、ここでは、そのなかからいくつかを紹介したいと思います。

  • 「子育て」×「忍耐力」
    出産直後の子育ては衝撃的な出来事の連続でした。赤ちゃんが泣いても対処の仕方がわからず、3時間おきに起こされるため不眠が続き精神的に追い込まれた時期もありましたが、一つ一つをクリアしていくことでいつしか子どもの成長を楽しむ心のゆとりが生まれるようになりました。
  • 「ママ友・パパ友との交流」×「コスト改善」
    定期的に行ってきたママ友交流会の外食費がかさむため、各家庭持ち回りで自宅で実施し、食べ物は自前で持ち込む方式を提案。お弁当を持参する人もいて、一人平均の参加費用を50%以上削減することができママ友たちにも喜ばれました。
  • 「自治会またはマンション管理組合」×「コミュニケーション力」
    同じ班に、自分より20歳ほど年配の役員同士で仲がわるい方々がいたため会合等で何かにつけて嫌なムードになりがちでしたが、程よい距離感をとりながら緩衝剤的な役割を果たすことで、自治会長さんから「助かります」と感謝の声をいただきました。

このように家仕事を「スキルが培える(自分が成長する)機会」と捉えることは、面倒に思いがちな活動に対しても、前向きな気持ちが持てることにもつながりそうです。

なお、これらのシーンやスキルの項目は自分なりに修正してよいという注釈もついています。自分流にアレンジすれば、より納得感が得られるのではないでしょうか。

職場から離れていても、人生のブランクではない

本リリースの最後には、しゅぶJOB総研所長の川上敬太郎氏の次のようなコメントが載っています。

「主婦層が家事や育児などに専念している期間はブランクと呼ばれます。確かに職場から離れている、という意味でブランク(=空白)と言われてしまうのは理解できなくはありません。しかしながら、それは決して人生のブランクを意味するものではありません。
<中略>
このシートを使うことで導き出される81パターンの家オペ力は、すべてが職場で通用するスキルとは言えないかもしれません。しかしながら、これまで空白扱いされてきた期間に、実は身に着けてきたスキルや経験があることに気づくきっかけにはしていただけると考えています。

これから育Work<育児しながら仕事>する(したい)けど、休み期間に不安を覚えるという方は、ぜひこちらのマトリックスを使用して家オペキャリアを積んだことを実感し、堂々と仕事に復帰していただければと思います。

休み期間=インプット期間という捉え方
サバティカル休暇と呼ばれる長期休暇を導入している企業があるのをご存知でしょうか。2018年に筆者はこの長期休暇制度を導入したHRテック企業のアトラエと外資系製薬会社のMSDを取材しました。

どちらの企業も長期休暇を「仕事のブランク」期間ではなく、仕事に役立つ学びやインプット期間として位置付けています。JBpress「新・働き方総合研究所」の記事(2018年6月28日公開)で紹介した、アトラエにおける制度導入を後押しした社員の言葉は次のようなものです(以下、記事より引用)。

「自分はアトラエの社員であると同時に、家に帰れば、父親です。週末は町内会のメンバーとして活動もしています。社員以外の役割を果たしている時に得られる『インプット』があるからこそ、アウトプットとしてアトラエの『サービス』が考えられるのです」

社員がずっと会社にいては見えないもの、できない経験は、企業にとっても、じつは貴重なものだということです。なお、詳細についてはJBpress「新・働き方総合研究所」の下記記事にまとめています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
胸を張って長期休暇がとれる会社の作り方(アトラエ)
「長期休暇」導入と「副業」推進に共通する最終目的(MSD)

 

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ABOUTこの記事をかいた人

小林麻理

ライター、社会保険労務士、本サイト運営人。執筆・編集オフィスライト(https://officewrite.wordpress.com)、社労士事務所ワークスタイルマネジメント(https://workmanage.net)代表。1978年千葉県生まれ。2000年早稲田大学法学部卒業、NTTデータ入社。2003年に出版社(商業界)に転職、その後、翔泳社を経て、2013年3月に独立。現在、2歳の娘の育児中。