夜に40度!どうする?小児科医が答える「発熱」のギモン(2)

小児科医が答える発熱のギモン(2)
子どもが発熱すると、受診すべきかを含め、どう対処したらいいか慌ててしまうことはありませんか。特に、保育園に入った当初は、子どもが頻繁に熱を出したりして、心配になる育Workerは多いかもしれません。そこで、小児科医が答える「発熱」のギモンでは、発熱に対して冷静に判断し、適切に対処するための正しい知識を現在自身も育児中の小児科医に教えてもらいます。「37.5度、受診は必要?小児科医が答える「発熱」のギモン(1)」に続く第2回は高熱時の対処です。
育江
こんにちは!育江(いくえ)です。「発熱」について疑問に思っていることを、先生にどんどん聞いていきたいと思います。
亜由子先生
こんにちは!本記事を担当する小児科医の諏訪内亜由子です。夫と共に女の子二人の育児をしながら、小児科医と産業医の仕事をしています。家庭でも職場でもみんなが笑顔で暮らせるように医療目線でコメントしていきたいと思います 。

夕方以降の発熱について

クリニックが終わりそうな時間帯…どうする?

育江
夕方病院やクリニックが終わる時間帯というころになって、急に熱が上がり、40度近くということがあります。そんなとき、クリニックに駆け込むべきか悩みます。どう判断すればいいでしょうか?
亜由子先生
病院やクリニックが終わり近くという時間帯だと、混んでいたり、時間のかかる検査はしてもらえない可能性もあります。まずは病院やクリニックに連絡してみましょう。
育江
病院やクリックがすでに閉まっていた、という場合はどう考えればいいでしょうか?
亜由子先生
時間外受診というのは、普段と違う病院にかかるわけですが、行った先でどのくらい待たされるかもわかりませんし、先生もいつもの先生と違います。また、待合室などでどんな感染症等の人と接触するかもわかりません。親子ともに大変負担になりますので避けられるものなら避けて、翌日普段のかかりつけの先生に見てもらうのが良いと思います。

迷ったら活用したい「こどもの救急」

育江
それでも「やっぱり受診したほうがよかったかな?」と不安に思うこともあります。
亜由子先生
受診の目安は前回お話したとおり、以下を参考にしてください。

  • 生後3ヶ月未満の場
  • 痙攣(けいれん)や嘔吐が見られる場合。ぐったりして顔色が悪いなど、全身の状態が悪い場合
    ただの「かぜ」ではない可能性があります。)
  • 明らかにおしっこの量が減っている場合
育江
3か月未満の場合は注意が必要なのですね。
亜由子先生
はい、「3ヶ月未満」であれば時間帯にかかわらず受診が必要です。それは、月齢的にワクチンがまだ十分に打てていないこと、髄膜炎や尿路感染などの重大な感染症の可能性があることからです。
それ以上の月齢である場合は、「かぜ」というケースも多くあるでしょう。
生後半年以上という場合は、母親からもらった免疫もなくなってきて、かぜをよくひくようになるからです。また、特に保育園などに通っていて感染症に多くさらされている場合などは、6ヶ月未満でも風邪をひくし、熱も出します。
「水分が取れている」「あやすと笑う」ならば、ひとまずお家で待機して、状況が変わったら救急診療所の受診を考えましょう。
そして、判断に迷うという時こそ、前回もご紹介した「こどもの救急」サイトを有効に利用していただけると思います。

育江
どのように利用すればいいのですか?
亜由子先生
次のように症状別にチェック項目があります。本当に時間外に受診が必要かどうか、項目をチェックして結果を確認してみましょう。
亜由子先生からもうひと言
限られた医療資源を有効に使う観点から、休日や夜間は1次、2次、3次と段階を分けて受診の場所が異なる場合があります。それぞれ次のように区分されています。

  • 1次救急クリニックなどにある簡単な検査でひとまず解決できる状態
  • 2次救急より進んだ検査や入院加療を必要とする場合
  • 3次救急直ちに命の危険がある場合

通常、1次救急の当番のクリニックまたは休日夜間診療所を受診して、必要に応じて高次病院に紹介されます。地域によって対応が異なりますので、お子さんが元気なときに確認しておきましょう。なお、受診の際は、生まれたときに低出生体重児だった、基礎疾患がある場合はかかりつけの医師に必ず相談しましょう。

高熱時、家での対処方法

冷やす?温める?対処の基本

育江
39度以上の高熱がでて、どんどん上がっているという場合、家での対処はどうしたらいいでしょうか?
亜由子先生
熱の上がり始めは手足が冷たく感じることが多いです。本人が嫌がらなければ冷やしましょう。基本的に発熱時は、冷やします。熱が上がりきってくると、手足も温かくなり、汗をかきますので、涼しくしてよく冷やしてください。汗で濡れた衣類もこまめに変えましょう。また、水分はしっかりとったほうが良いですが、急にたくさん取ると気持ちが悪くなることもあります。普段より少しずつ、高い頻度で与えます。母乳のほかは、お茶や水より糖分やミネラルを適量含んでいる経口補水液のほうがおすすめです。

エアコンや入浴はOK?

育江
涼しくしたり、温度調節をするというときにエアコンは使用してもいいのでしょうか?
亜由子先生
エアコンの使用は問題はありません。エアコンで涼しくする際は、特に次のことに気を付けましょう。

  • 風が直接当たらないようにすること
  • 汗をかいた衣類は速やかに変えること(汗でぬれているところに冷たい風が当たると冷えすぎることがあります)
    また、エアコンで暖かくする際は、特に次のことに気を付けましょう。

  • 室内を暖かくしすぎないこと
  • 室内が乾燥しすぎないようにすること(加湿器を使用するなど対策をしましょう)
育江
お風呂に入れたいのですが、大丈夫ですか?
亜由子先生
入浴も問題はありません。お風呂を何日も我慢して、皮膚の状態が悪くなってしまう方もいます。長い入浴は疲れてしまうので、さっと入るかシャワーが良いと思います。

解熱について

解熱剤・基本の考え方

育江
解熱剤を処方されました。38.5度以上といわれましたが、まだそれほど、苦しそうには見えません。どのような考え方で使えばいいでしょう?
亜由子先生
6ヶ月以上なら解熱剤の使用が可能です。ただし、アセトアミノフェン(商品名:カロナール、ピリナジン、アンヒバなど)という種類のものに限ります。
熱があっても元気がある場合や、眠れている場合は使用する必要はありません。
18~19世紀に解熱剤が開発されたときは、発熱は病的な状態なので、すぐに解熱剤を飲んで是正すべきとの考えがありました。しかし現在、発熱は、体が身を守るための生体防御機能のひとつとして理解されるようになってきました。
少なくとも発熱が軽度で、ほとんど苦痛を訴えない場合には解熱剤の必要はありません。
どこかに痛みがある場合や、熱により、飲めない・寝付けないなどの場合に使用を検討しましょう。
亜由子先生からもうひと言
小児の解熱剤はアセトアミノフェンを必ず使用してください。製品名はカロナール、アンヒバ、アルピニー、コカール、市販の小児用バファリンなどです。
使ってはならないものは、(小児科以外で誤って処方されたり、家にある解熱剤でも使用不可)アスピリン(医療機関で処方するバファリン)、スルピリン(メチロンなどのピリン系)、メフェナム酸(ポンタールなど)、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレンなど)、インドメタシン(インテバンなど、市販の鎮痛剤にも含まれる)です。
また、解熱剤成分の含まれる風邪薬は漫然と使用するとどのように熱が出ているのかわからなくなるため、注意が必要です。熱がずっと高いままなのか、自然に上がったり下がったりしているのかは診断の参考になるのです。
内科などで処方されることが多い総合感冒薬(複合剤)には、PL顆粒(トーワチーム顆粒、サラザック顆粒など)、幼児用PL顆粒、LLシロップなどがあります。上記の薬剤はアスピリンの成分が含まれますので、小児にはあまり使いません。
アスピリンは15歳未満のインフルエンザ、水痘には使用禁止です。熱の出始めはどんな病気かわかりませんので、幼児用PL顆粒、LLシロップは小児用ですが、小児科医は使いません。

座薬と飲み薬、どっちがいい?

育江
解熱剤で座薬と飲み薬を選ぶように言われました。使い分けなどはあるのですか?
亜由子先生
アセトアミノフェンの解熱剤の形状には座薬、飲み薬の粉薬・シロップ剤・錠剤があります。錠剤はおおむね20kg以上のお子さんから使用できます。それより小さい方は症状や好みに合わせて使い分けていきます。嘔吐がひどい場合や口の中が痛くて飲めない場合は座薬、下痢がひどい場合は飲み薬を選択します。そのほかは好みですが、普段お子さんがお薬を飲むのを嫌がることが多いかたや、機嫌がとても悪いとき、いやいや期がひどい場合は座薬がおすすめです。
また、今回のお熱で使わなくて次のために予備として保管しやすいのも座薬です。

解熱剤以外の解熱の方法

育江
解熱剤以外で、有効な解熱の方法はありますか?
亜由子先生
クーリング(5㎝程度の小さな保冷材などをわき、首、足の付け根などにあてる)、室温の調節も有効です。おでこに張るタイプの冷却シートはひんやりして気持ちいいですが、解熱効果はほとんどないことが分かっています。また、小さいお子さんでは口に入ってしまうなど窒息の危険性があります。
お刺身を買ったときにつけてくれる保冷剤などが便利です。

育江
子どもの発熱に備えて、自宅で準備しておいたものはありますか?
亜由子先生
解熱剤は薬局でも買うこともできます。お子さんが半年以上になったら、解熱剤のほか、クーリング用品・経口補水液(アクアライト、アクアソリタ、OS1など)を準備しておきましょう。経口補水液は色々な味がありますから、お子さんの好みを確認しておくとよいですよ。ご家庭で水、塩、砂糖で簡単に作ることもできます。

予防接種の重要性

育江
ありがとうございました!発熱について、だいぶ冷静に対処できそうです。
亜由子先生
はい、なにより予防接種を受け、ワクチンをきちんと打っていれば、重大な感染症はある程度防げるようになっています。
安易な抗菌薬投与が良くないというのは前回お話したとおりです(特に、熱が症状の溶連菌・尿路感染症は抗菌薬を飲んでしまうと、診断がつかなくなり、その後の治療に差し支えます)。抗菌薬が多用された時代もありましたが、昔は肺炎球菌やHibの予防接種がなかったという背景があります。
1歳を過ぎて予防接種がひと通り済んでいるようなら、子供の病気に冷静に対応していくことができますね。
最近、予防接種に関して素敵な本が出版されました。『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK 疑問や不安がすっきり! (専門家ママ・パパの本)』。私が普段外来でお父さんやお母さんに説明していることとよく似ています。

また、予防接種の基礎知識は育Workでも3回にわたって掲載しています。こちらも参考にしてください。

育江
予防接種のなかでもインフルエンザのワクチンは毎年打たなければいけなかったのですよね。
亜由子先生
そのとおりです。インフルエンザについては【別の記事(12月公開予定)】で改めて解説します。

ABOUTこの記事をかいた人

諏訪内 亜由子

慶応義塾大学医学部卒業(2002年)、同大学院医学研究科にて医学博士取得・小児科専門医・産業医。大学病院、関連病院小児科勤務を経て、現在、小児科クリニック医師、産業医として活動中。 「夫と共に女の子二人の育児をしています。家庭でも職場でもみんなが笑顔で暮らせるように医療目線でコメントしていきます。」