37.5度、受診は必要?小児科医が答える「発熱」のギモン(1)

小児科医が答える発熱のギモン(1)
子どもが発熱すると、受診すべきかを含め、どう対処したらいいか慌ててしまうことはありませんか。特に、保育園に入った当初は、子どもが頻繁に熱を出したりして、心配になる育Workerは多いかもしれません。そこで、小児科医が答える「発熱」のギモンでは、発熱に対して冷静に判断し、適切に対処するための正しい知識を現在自身も育児中の小児科医に教えてもらいます。
育江
こんにちは!育江(いくえ)です。「発熱」について疑問に思っていることを、先生にどんどん聞いていきたいと思います。
亜由子先生
こんにちは!本記事を担当する小児科医の諏訪内亜由子です。夫と共に女の子二人の育児をしながら、小児科医と産業医の仕事をしています。家庭でも職場でもみんなが笑顔で暮らせるように医療目線でコメントしていきたいと思います 。

なぜ「発熱」するの?

保育園に入ってからの頻繁な「発熱」

育江
保育園に入ってから、しょっちゅう熱を出してしまいます。どうしてでしょうか。
亜由子先生
保育園に入園したてのお子さんたちは、最初の1年は季節に応じて、様々なウィルスに「初めて」さらされます。ですから、一人っ子のお子さんなどは特に毎週のように熱を出すことも珍しくはありません。
新しい「敵」と体が頑張って戦っているのです。「毎週のように熱を出すのですが、免疫がおかしいのではないでしょうか?」と心配するお母さんもいらっしゃいますが、免疫がしっかりしているからこそ熱が出るのです。
保育園に入園したてのお子さんばかりでなく、幼稚園に入園したばかりのお子さん、そして、小児科に入局したばかりの研修医、新人看護師さんなど大人も最初の1年は頻繁にかぜをひいて苦労するものです。
育江
こうした発熱が続くと思うと心配です。
亜由子先生
初めての感染を繰り返し、1年2年たつと「初めての敵」は少なくなります。それに伴い、発熱の頻度も格段に減ってくるでしょう。
また、熱には悪い点だけではなく、良い点もあります。たとえば、熱により、ウィルスの増殖が抑制されます。白血球の機能が促進され、敵を食べる動きが活発になるからです。免疫の反応が高まるということです。

体温と発熱の考え方

「37.5度」の医療的な意味は?

育江
保育園で「37.5度」になると登園禁止というルールにしているところが多いようです。「37.5度」というのはどんな意味があるんでしょうか?
亜由子先生
発熱とは、本来は同じ条件で測定して、平常より1度以上高い状態をいいます。乳幼児の体温はだいたい36.5度くらいなので、1度高い状態である37.5度が目安になっているんですね。また、予防接種法や感染症法では37.5度以上を発熱と定義しています。
平熱はお子さんによっても違います。小さいお子さんのほうが高い傾向があります。また、体温を測定する環境、時間帯、場所(耳、わき、肛門)によっても異なります。
ですから、おうちの体温計の正しい使い方を確認しておくのも大事です。正しく「平熱」を把握するためにも、おうちの体温計の正しい使い方を確認しましょう。たとえば、わきで測るタイプの体温計の注意点は、斜め下からわきの凹んだ部分にあてて、腕をわきに密着させることです。

夕方は「熱」が上がりやすい?

育江
夕方になると37.7度、ということがあります。様子は元気なのですが、心配な「発熱」なのか判断がつかないです。どう考えたらいいでしょうか?
亜由子先生
午後は体温が上がりやすい時間帯です。
体温は1日のサイクルで周期的に変動しており、午前4時ごろが最も低く、午後から夕方にかけて高くなります。温度差は1度以内です。したがって、時間帯によって異なる平熱のリズムを知っておく必要があります。
起床時、午前、午後、夜の計4回体温を測り、時間帯ごとの平熱としておぼえておくと良いと思います。この場合、入浴後、授乳後、食後すぐは体温が上がりますから、そのタイミングは避けましょう。また平熱の測定は1日だけでなく、日を置いて何回か測ってみましょう。

発熱と受診

何度までなら大丈夫?

育江
熱は何度までなら大丈夫なのでしょうか?
亜由子先生
かぜなどの感染症にかかると、子どもはたいてい熱を出します。感染症法では「発熱」は37.5度以上、「高熱」は38度以上と決められています。ご質問のように「熱は何度までなら大丈夫?」と心配する方がいますが、一概には言えないところがあります。39度以上の熱があっても心配ないこともあれば、38度くらいの熱でも慎重な対処が必要なことはあるのです。

受診の目安は?

育江
そうすると、受診するかどうかの目安はどのように考えればいいでしょうか?
亜由子先生
発熱で早めに受診してほしい状態は、次のような症状です。

  • 生後3ヶ月未満の場合
    予防接種がまだしっかり打てていない月齢です。髄膜炎(ずいまくえん)など、重大な感染症の可能性があります。3カ月未満児の発熱の90%はウィルス性ですが、残り10%は敗血症や細菌性髄膜炎などが含まれています。
  • 痙攣(けいれん)や嘔吐が見られる場合。ぐったりして顔色が悪いなど、全身の状態が悪い場合
    ただの「かぜ」ではない可能性があります。
  • 明らかにおしっこの量が減っている場合

髄膜炎の大きな原因だった、肺炎球菌やHib(インフルエンザ菌)が定期予防接種になったおかげで乳幼児の髄膜炎はずいぶん減りました。ただし、ゼロではありません。受け忘れていたなどで、予防接種をしていない場合などは、特にこうした重大な感染症の可能性を疑う必要がありますので、必ず小児科の医師にお伝え下さい。

髄膜炎とは、細菌が脳や髄液を包む髄膜の内側に入り込み起こる病気です。亡くなったり、重篤な後遺症を残します。(3カ月未満では免疫系が十分に発達しておらず、髄膜炎や尿路感染症などでも十分な発熱がないこともあります。発熱だけでなく、ぐったり、哺乳不良なども受診の目安にしてください。)

亜由子先生からもうひと言
こどもの救急」というサイトではお子さんの気になる症状をクリックするだけで、受診の目安がわかるのでお薦めです。
※2019年10月時点のメインサイト。本サイトは、厚生労働省研究班/公益社団法人 日本小児科学会により監修されてます。
また、一家に1冊でいいので病気の時の基本的な知識の書いてある本があると頼りになりますよ。こちらの本が、写真も多くてお薦めです。

『初めてママ&パパの0-6才 病気とホームケア』 主婦の友社

「発熱」の原因がかぜの場合

受診は早くしたほうがいい?

育江
発熱とともに咳や鼻水が出て、かぜのようなのですが、受診したら、早く治りますか?
亜由子先生
熱の原因になるかぜには自然経過があります。これを知っておくのは大切です。ほとんどのかぜはウィルスが原因です。そして、はじめの1-3日で熱が収まります。熱は上がったり下がったりすることが多いです。
発熱から少し遅れて、鼻水(透明でサラサラ)が出始めます。その後壊れたウィルスの破片を処理した白血球が混じった少し色のついたドロッとした鼻水になります。最後に咳が目立つようになっていきます。咳は徐々にひどくなりますが、数日で改善します。
「うちの子はかぜをひくといつも咳が残ります」というママがいますが、咳は最後になるというのは、こうした自然経過なのです。そして、病気の種類によりますが、病院に行けば、薬を早く飲めば早く治るというわけではないのです。

処方されるかぜぐすりはどんなもの?

育江
かぜの場合、受診して薬を飲めば早く治るわけではないのですね…。処方される「かぜぐすり」はどのようなものでしょうか?
亜由子先生
一般的に小児科で処方される「かぜぐすり」は、次のものが多いと思います。

  • 熱や痛みを和らげる解熱剤(「アセトアミノフェン」が多いです)
  • たんを出しやすくする去痰剤(きょたんざい)
  • ひどい咳を一時的に和らげる咳止め
  • 鼻水を抑える抗ヒスタミン剤

なお、咳止めは使い方を間違えると、かえって症状が長引く可能性があります。
抗ヒスタミン剤は鼻水を固くさせ、出しにくくしてしまったり、高熱との相性が悪く場合によっては痙攣(けいれん)のきっかけを作ってしまったりすることもあります。「緑っぽい鼻水がでます、細菌でしょうか?抗生剤を飲んだほうがいいですか?」という質問もよくありますが、まだ自分で鼻のかめないこどもの場合は時間が経過した鼻水がドロッとして色がついている場合がありますので、一概に細菌感染とは言えません。必要なおくすりについては、小児科の医師とよく相談しましょう。

亜由子先生からもうひと言
最近は保護者の方にも知識がずいぶん浸透してきていますが、むやみな抗菌薬処方は良くないとされています。なぜなら、溶連菌感染症や尿路感染症など怖い感染症にかかっていた場合、ごく僅かな抗菌薬を飲んでいるだけでも、その診断ができなくなってしまうことがあるからです。これらは、特別の治療を要しますので、きちんとした診断の上で治療が必要になります。
また、受診の際、気をつけていただきたいのは、「鼻水だけだから」といってまず小児科医以外にかかってしまうこと。もちろん、医師によりますが、中には少し長引いていて心配だからと抗菌薬を処方したり、聴診もせずに咳だからといって喘息のお薬が出されることがあります。どんな医師も、患者さんのことを一番に考えて診療していることは確かだと思いますが、医師によって、得意分野と不得意分野があるというのも事実です。小児科以外でも小児病院での研修を受けたり小児耳鼻科や小児外科のような小児を見るのが得意な小児科以外の先生もいます。ただ、20年ほど前までの医師の研修制度では自分の選んだ科のみを研修するという制度でした。こどもの診療に詳しくない医師がいても不思議はありません。
育江
発熱に対する理解がだいぶ深まりました。ただ40度近く…といった高熱の場合はどうしても慌ててしまいます。どのように対処したらいいのでしょうか?
亜由子先生
次回「夜に40度!どうする?小児科医が答える「発熱」のギモン(2)【11月公開予定】」ではその点について解説していきます。

ABOUTこの記事をかいた人

諏訪内 亜由子

慶応義塾大学医学部卒業(2002年)、同大学院医学研究科にて医学博士取得・小児科専門医・産業医。大学病院、関連病院小児科勤務を経て、現在、小児科クリニック医師、産業医として活動中。 「夫と共に女の子二人の育児をしています。家庭でも職場でもみんなが笑顔で暮らせるように医療目線でコメントしていきます。」