社労士がイチから解説、出産&育児制度(3)
赤ちゃんを授かったら嬉しい!と思う一方で、仕事はどうしよう…と不安に思われている方も多いかもしれません。「社労士がイチから解説、出産&育児制度」では、会社員の方が妊娠・出産したときの手続きや育児休業に関して、将来、育Workをしたい育子さんの疑問にこたえるかたちで、社会保険労務士がわかりやすく解説します。第3回は、出産費用について。実際の出産費用に対して、出産育児金はどれくらいもらえるのか、また利用の手続きなどを解説していきます。第1回:育休の条件は?
第2回:産休の条件は?

こんにちは!育子(いくこ)です。出産や育児に関する制度について、わからないことをどんどん聞いていきたいと思います。

みなさん!こんにちは。この記事を担当する社会保険労務士の森広江です。
「社労士がイチから解説、出産&育児制度」では、働く方が妊娠・出産したときの休業制度や各種手当についてお話ししています。今回は出産費用についてです。
「社労士がイチから解説、出産&育児制度」では、働く方が妊娠・出産したときの休業制度や各種手当についてお話ししています。今回は出産費用についてです。
出産時は、健康保険は使用できない?

前回の記事で、出産前後にお休みしている間は健康保険からお金がもらえるということはわかりました。ただ、出産時には、出産費用として、まとまったお金がかかると聞いています。

はい、国民健康保険中央会の発表によると、平成28年度の正常分娩の場合の出産費用の全国平均は50万5,759円で、最も平均値が高い東京都は62万1814円、最も平均値が低い鳥取県は39万6,331円となっています。

健康保険は使えないのですか?

はい。病気やケガの場合、健康保険で一定割合(70歳未満は7割)を負担してもらえるため(療養の給付と言います)、窓口の自己負担は3割です。
それに対し、出産は一般的な病気ではないため、健康保険に加入していても、出産にかかる費用は同様には負担してもらえません。そのため出産にかかる費用も原則、全額自己負担となります。
ただし、母体の保護が必要な場合(重度のつわりや帝王切開で出産した時など)は健康保険証を使って治療を受けることができます。
それに対し、出産は一般的な病気ではないため、健康保険に加入していても、出産にかかる費用は同様には負担してもらえません。そのため出産にかかる費用も原則、全額自己負担となります。
ただし、母体の保護が必要な場合(重度のつわりや帝王切開で出産した時など)は健康保険証を使って治療を受けることができます。
出産育児一時金とは?
制度の概要

出産費用が全額負担となると、貯蓄の面で不安があります。なにか制度はありますか?

はい、出産した時には、出産に関する一時金が健康保険から支給されます。ママが加入している健康保険から支給される一時金を、「出産育児一時金」と言います。
ママが健康保険に加入していない場合

ママが自分で健康保険に加入していない(パパの扶養に入っている)場合でも出産に関する一時金はもらえるんですか?

はい、ママがパパの扶養に入っている場合でもパパの加入している健康保険からもらえます。この場合は「家族出産一時金」と言います。

それでは、ママもパパもそれぞれで健康保険に入っている場合は、ママもパパもそれぞれで出産に関する一時金を受け取れるのですか?

いいえ、ママとパパがそれぞれで健康保険に加入している場合でも、(出産育児一時金と家族出産一時金のうち)どちらか一方しか受け取ることができません。どちらをもらうかは自分たちで決められます。
早産の場合

そういえば、友人は早産だったと話していました。早産の場合でも出産した場合は、出産育児一時金がもらえるんですか?

出産育児一時金の対象は妊娠4ヶ月(85日)以上で出産する方です。また、1年以上健康保険に加入しているママが、退職した後6ヶ月以内に出産した場合もママが加入していた健康保険から出産一時金をもらうことができます。
なお、万が一、妊娠4ヶ月(85日)以上で流産、死産となってしまった場合も出産育児一時金の対象となります。
なお、万が一、妊娠4ヶ月(85日)以上で流産、死産となってしまった場合も出産育児一時金の対象となります。
出産育児一時金の額は?

それでは出産育児一時金の額はどのくらいですか?

出産育児一時金は出産手当金と異なり一律の金額となります。
[支給額]子ども1人につき42万円
ただし、双子(多胎妊娠)の場合、子どもの人数×42万円
これは、産科医療補償制度に加入する医療機関を利用の場合の金額です。産科医療補償制度に加入していない医療機関の場合は40万4,000円となります。また妊娠22週未満での出産や流産の場合は産科医療補償制度対象の分娩とならないため、40万4,000円となります。
なお、加入している健康保険組合によっては、さらに付加金の給付がある場合もあります。
[支給額]子ども1人につき42万円
ただし、双子(多胎妊娠)の場合、子どもの人数×42万円
これは、産科医療補償制度に加入する医療機関を利用の場合の金額です。産科医療補償制度に加入していない医療機関の場合は40万4,000円となります。また妊娠22週未満での出産や流産の場合は産科医療補償制度対象の分娩とならないため、40万4,000円となります。

出産育児一金の手続き

手続は出産手当金のように会社が行うんですか?

いいえ、本人が手続を行います。出産手当一時金の手続では「直接払い制度」があります。これは、国が医療機関に「直接」出産手当一時金を支払う制度です。この制度を利用すると、手続きは医療機関ですれば済み、図のように、本人が医療機関へ支払う費用も少なくなりますのでおすすめです。



出産時の費用にも健康保険から出産育児一時金が出ることがわかり、だいぶ安心できました。

次回は、妊娠時の制度についてお話します。
直接払い制度とは?(もう少し詳しく)
直接払い制度とは出産育児一時金の請求と受取りを妊婦さん本人に代わり医療機関が行う制度です。
本文で説明したとおり、健康保険側から医療機関へ直接、出産育児一時金の支払いが行われるため、退院時に窓口で出産費用を全額もしくは一部を支払う必要がなくなります。
直接払い制度の利用を希望する場合は、出産予定の医療機関へご相談ください。
直接払い制度を利用しない場合は、出産後に健康保険に加入している方が健康保険側へ申請することで、出産育児一時金を受け取ることができます。利用手順は下図のようになります。

直接払い制度とは出産育児一時金の請求と受取りを妊婦さん本人に代わり医療機関が行う制度です。
本文で説明したとおり、健康保険側から医療機関へ直接、出産育児一時金の支払いが行われるため、退院時に窓口で出産費用を全額もしくは一部を支払う必要がなくなります。
直接払い制度の利用を希望する場合は、出産予定の医療機関へご相談ください。
直接払い制度を利用しない場合は、出産後に健康保険に加入している方が健康保険側へ申請することで、出産育児一時金を受け取ることができます。利用手順は下図のようになります。

「出産費貸付制度」とは?
出産予定日前に出産に要する費用を必要とする方に対して出産育児一時金が支給されるまでの間、必要な資金を無利子で貸し付ける制度もあります。これを「出産費貸付制度」といいます。(全国健康保険協会の場合、出産育児一時金の8割相当額が限度)
対象となる方は、出産育児一時金の支給が見込まれる、健康保険に加入している方(ママ)、または配偶者(パパ)の扶養に入っているママのうち、次のどちらかに該当する方です。
①出産予定日まで1ヵ月以内の方
②妊娠4ヵ月(85日)以上で医療機関等に一時的な支払いを要する方
貸付金の返済は、出産育児一時金が支給される時に貸付額を控除して精算となります。
(貸付の申込は、ご加入の全国健康保険協会、もしくは健康保険組合にお問い合わせください)
ただし、出産育児一時金の「直接支払制度」を利用する場合は、出産費貸付制度を利用することはできません。
出産予定日前に出産に要する費用を必要とする方に対して出産育児一時金が支給されるまでの間、必要な資金を無利子で貸し付ける制度もあります。これを「出産費貸付制度」といいます。(全国健康保険協会の場合、出産育児一時金の8割相当額が限度)
対象となる方は、出産育児一時金の支給が見込まれる、健康保険に加入している方(ママ)、または配偶者(パパ)の扶養に入っているママのうち、次のどちらかに該当する方です。
①出産予定日まで1ヵ月以内の方
②妊娠4ヵ月(85日)以上で医療機関等に一時的な支払いを要する方
貸付金の返済は、出産育児一時金が支給される時に貸付額を控除して精算となります。
(貸付の申込は、ご加入の全国健康保険協会、もしくは健康保険組合にお問い合わせください)
ただし、出産育児一時金の「直接支払制度」を利用する場合は、出産費貸付制度を利用することはできません。