受け忘れたときは?小児科医が答える予防接種のギモン(3)

小児科医が答える予防接種のギモン(3)
保育園などへ子供を預けて働く育Workerが、子供の健康のためにできること、しておきたいことの1つが「予防接種」でしょう。「小児科医が答える予防接種のギモン」では、小児科医の諏訪内亜由子先生に、育Workerの育江さんの質問に答えていただくかたちで「予防接種」に関する正しい知識をお伝えします。
予防接種の種類や任意接種のについて解説した第1回、効き目に関する内容を扱った第2回に続く第3回は、接種忘れや体調不良、里帰り時、0歳児から保育園で通う場合など、様々なケースについて答えていきます。
育江
こんにちは!育江(いくえ)です。「予防接種」について疑問に思っていることを、先生にどんどん聞いていきたいと思います。
亜由子先生
こんにちは!本記事を担当する小児科医の諏訪内亜由子です。夫と共に女の子二人の育児をしながら、小児科医と産業医の仕事をしています。家庭でも職場でもみんなが笑顔で暮らせるように医療目線でコメントしていきたいと思います 。

予防接種の接種期間

うっかり忘れたら

育江
受けなければいけない予防接種をうっかり忘れて予防接種期間がすぎてしましました。どのくらいまでなら間に合いますか?
亜由子先生
予防接種の種類によって、期間が過ぎてもうてるもの、副反応が増えることがわかっていて、一定年齢以上ではうてないものもあります。主なワクチンを分類すると、次のとおりです。

・期間が過ぎても打てるもの

B型肝炎、三種混合、不活化ポリオ、二種混合、麻疹、風疹、水痘、おたふく、日本脳炎、インフルエンザ、子宮頸がん
・副反応が増えるため、一定年齢以上で打てないもの
ロタ、ヒブ、肺炎球菌

また、定期接種では接種はできても期間を過ぎると、有料となることもしばしばです。
料金は、接種が遅れた理由や、病院・自治体にもよるため、かかりつけの小児科に聞いてみましょう。
忘れないように、クーポンが来たらすぐに小児科の予約を取るとよいですね。
なお、日本小児科学会のが公表しているワクチンスケジュールはこちらです。

亜由子先生からもうひと言
ワクチンを受けるの忘れてしまい、小児科行きづらいな、と先延ばしにしてしまうお母さんを時々見かけます。普段見てもらってる先生だと余計行きにくくなってしまうかもしれませんね。
大事なのはお子さんの健康です。時期を逃しても打ったほうが良いワクチンも多いのです。その時はもしかしたら叱られるかもしれないけれど、それは先生もお子さんのことを思ってのこと。必ずきちんと対応してもらえるはずですよ。勇気を出して小児科に行きましょうね。

忘れないための工夫

育江
接種忘れがないか心配です。
亜由子先生
診療の際にお母さん方から接種忘れがないかチェックを求められることがあります、また、健診の時には必ず順調に接種できているか確認します。
特に気をつけたいのはおたふくですね。というのも、2回目のおたふくは1回目接種後から3-5年で接種だからです。4,5歳ごろなので、あまり風邪もひかなくなってきた・母子手帳を持ち歩かなくなるなども原因の一つです。
しかも任意なので、クーポンも送られません。打とうと思っていたのに忘れている方は、結構います。
MRもしくは日本脳炎1期追加と一緒に接種するといいですよ。忘れないために、MRや日本脳炎1期追加の接種欄に鉛筆で「おたふく」と書いておくとよいでしょう。

こんなとき接種はどうする?

体調が万全ではないとき

育江
熱はありませんが、鼻水や咳が出ています。予防接種をひかえたほうがいい目安はありますか?
亜由子先生
37.5℃以上の発熱や明らかに呼吸状態が悪い場合は接種できません。またワクチンの種類によっても異なり、水痘や突発性発疹のあとなど少し期間をあけたほうが望ましいことがあります。そうした目安を前提として、予防接種は可能な限り早めに接種していくのがお子さんのためになります。
以前こんなことがありました。4か月のお子さんを連れたママ、まだワクチンが一つも打てていないというのです。その理由を尋ねると、『肌の状態がわるくてステロイドのクリームを塗っている場合は接種できない』ということを聞いて、生後2か月からのワクチンをうちに来るのが遅れたとのことです。クリームを塗ったらワクチンを打てないということはありません。
こうした状況はとても危険ですので、まずは自分で判断せず、かかりつけの先生に相談してみましょう。

里帰り予定のとき

育江
妹が、里帰り出産する予定です。その間のワクチン接種はどうしたらいいのでしょうか?妹は冬に出産するので、2か月以上、滞在するとのことです。
亜由子先生
そうしたケースでは自宅に戻ってからワクチンを打とうと思うと、どうしても接種が遅くなってしまいますね。そのため、里帰り先でも接種可能かどうか、お住いの自治体にお問いあわせください。たいていは、双方の自治体とのやり取りにより、定期接種は無料(いったん支払って還付される形もあり)で受けられます。
特に、任意接種のロタワクチンは接種開始時期に制限(生後3か月ごろ)があるために注意が必要です。
亜由子先生からもうひと言
特定の病気が流行している地域に帰省する方は特に注意が必要です。日本脳炎流行地域に渡航・滞在する小児、最近日本脳炎患者が発生した地域・ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児に対しては、生後6か月から日本脳炎ワクチンの接種開始を推奨されています。国立感染症研究所のサイトで紹介されているように、一部の県では、豚の日本脳炎抗体保有率が高いことがわかっています。なお、帰省や旅行で訪れる方も生後6か月から予防接種ができます。

0歳から保育園に通うときは

育江
妹は保育園に0歳から預けて復帰するようです。保育園に行く場合に、予防接種で気を付けることはありますか。
亜由子先生
ヒブ、肺炎球菌、B型肝炎、ロタは2か月から、4種混合は生後3か月から接種ができます。入園前に、できるだけ早く多くのワクチンを接種しておきましょう。できればこれらのワクチンの2回目までは済ませておきたいところです。
また、水痘、MR(麻疹風疹)は公費の定期接種は1歳からですが、お母さんからもらう免疫は6か月ころから低下します。6か月から1歳ごろ周囲に流行があれば、感染の可能性があります。水痘、MR、おたふくは1歳未満でも自費で接種できます。1歳未満で1度任意として接種したうえで、1歳を過ぎた時点でまた定期接種できれば、さらに安心と言えます。
育江
インフルエンザの予防接種などは、0歳児にはきかないときいたのですが、どうなんでしょう?
亜由子先生
確かに、低年齢のお子さんでは免疫がつきにくいことがわかっています。ただ、効果がゼロではないのです。優先順位としては周りの大人ですが、可能であれば6か月以上のお子さんで保育園に行っている場合は接種しておくとよいと思います。

これからでも受けたい予防接種

育江
最近になって増えたワクチンもありますね。特に気を付けたい、これから接種したほうがいいものはありますか?
亜由子先生
ワクチンについては日々研究されて、みんなが健康でいるためにはどんな時期にどんなワクチンをうったらいいのか変化していきます。

日本人の生活、外国人の割合や海外旅行の増加なども変化の原因になります。また、すべての予防接種医がその変化にタイムリーに反応できているとも限りません。そのため、昔は打たなくてもよかったけども、今からでも打ったほうがよいワクチンとして、以下のようなものがあります。

水痘、おたふく
昔は、水痘、おたふくが1度だけでいいことがありました。その後の研究で、1回のみでは免疫が下がったり、予防効果が不十分だということがわかりました。いまは2回接種が推奨されています。小学校高学年から中学生くらいのお子さんがいる方は、2回打っているか確認をしてくださいね。

B型肝炎
今は定期接種ですが、数年前までは任意でした。
B型肝炎はアジア地域ではまだまだ多く、体液の接触(涙、血液、汗など)でうつります。そのため、保育園での密着した生活のなかで、お友達をひっかいてしまったり、部活での回し飲みなどでうつることもあるでしょう。もし、お兄ちゃんやお姉ちゃんで接種してない方がいたらお勧めです。

育江
先日、夫にも「風疹」の抗体検査と予防接種のお知らせが届きました。これも今からでも受けたほうがいいということなんでしょうか?
亜由子先生
ぜひ、お勧めします。風疹は40台前後の男性に多く発症します。ちょうど働くお父さん世代でしょうか。風疹の最大の問題は母子感染による「先天性風疹症候群」です(先天性風疹症候群は、妊婦さんが風疹に罹患することにより、おなかの赤ちゃんに感染の影響が及び、赤ちゃんに、難聴や白内障、先天性心疾患などを起こします)。予防にはワクチンが最も有効ですが、妊婦さんは接種できないため、家庭や職場などで妊婦さんと接する可能性がある人がワクチンを打っておくことが大切になります。
特に、昭和37年(1962年)4月生まれから昭和54年(1979年)4月生まれの男性は制度の関係から、一度も風疹のワクチン接種をされていない可能性が高いです。そのため、積極的に検査・接種をお勧めします。
厚労省は風疹の流行拡大に対する措置として、2019~2021年度末までの3年間に対象世代の男性に原則無料で検査、接種を行うことにしました。
育江
予防接種について疑問に思っていたことを解消することができました。必要な予防接種を、親子ともにしっかりと受けていきたいと思います。

ABOUTこの記事をかいた人

諏訪内 亜由子

慶応義塾大学医学部卒業(2002年)、同大学院医学研究科にて医学博士取得・小児科専門医・産業医。大学病院、関連病院小児科勤務を経て、現在、小児科クリニック医師、産業医として活動中。 「夫と共に女の子二人の育児をしています。家庭でも職場でもみんなが笑顔で暮らせるように医療目線でコメントしていきます。」